売上増と忙しさの代償
ある建設会社様(以下「A社」といいます。)で実際にあったことです・・・
A社のB部門の今期の目標は5億円で前期の4億円から大幅に増加しました。B部門はこのところ順調で目標を1億円増やしても大丈夫だろうという社長の判断でした・・・
このA社が決算を迎え、数字を締める時期になりました。B部門の結果はどうなったのでしょうか・・・
B部門は、見事に予算5億円を達成しました!しかし・・・
B部門の今期の利益率は20%でした。前期の利益率及び目標利益率もともに30%だったのですが、なんと10%も落としてしまったのです。
4億円×30%=1億2千万円 > 5億円×20%=1億円
せっかく売上目標の5億円を達成したにもかかわらず、獲得した利益は2千万円も減ってしまいました・・・
では、なぜこんなにも利益率が落ちてしまったのでしょうか・・・?
答えは簡単でした。「忙しすぎた」のです。B部門長に直接お話をうかがいました。今までで一番忙しく、一番仕事をしたとおっしゃっていました。しかし、そのB部門長の過去最大の努力も虚しく、得られた利益は去年を下回ってしまったのです。
売上を上げようとすると忙しくなります。忙しくなると本来しなければならないことができなくなることが多々あります。要は「管理」がずさんになる訳です。特に建設業のように着手から完成までに時間がかかるような業種は、管理を怠ると取れる利益も取れなくなっていきます。工事を管理すべきB部門長が忙しすぎて、工事の管理を怠ったこと、そして何よりもB部門及びB部門長の力を超えた売上をとりにいってしまったことが最大の敗因でした。
A社の社長はさすがでした。翌期のB部門の目標をもとの4憶円に引き下げ、利益率を30%に戻すように指示するとともに、利益率の悪い上場会社の得意先を2件、あっさりと取引をやめてしまいました。B部門はその期、見事に売上4億円及び利益率32%を達成しました。B部門長にまたお話をうかがいました。「去年より楽だった」というのがB部門長のお言葉でした。
売上が増加し、会社が忙しくなったからといってそれに比例して利益が増える訳ではありません。「売上」を軸にしてしまうとこんな間違いが簡単に起こってしまいます。また、新しいことをしようにも、何かを改善しようにも「既存業務が忙しい」というのが常に邪魔をします。会社の社員が忙しそうにしていたら社内に何か問題があるのかもしれません。忙しさから少し解放されたら、売上を増やすことよりも、「利益をどう増やすか」をみんなで考えてみてはいかがでしょうか?
「忙しい」を言い訳にできない社員は必ず「利益をどう増やすか」考えてくれるはずです。