労働分配率経営
【働き改革による経営課題】
2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行され、現在「働き方改革」は大企業だけでなく、中小企業にとっても重要な経営課題の一つとなっています。
厚生労働省では、「働き方改革」とは働く人々が個々に事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革と定義しています。
働き方改革が叫ばれる昨今、残業を減らし、有給所得のしやすい職場環境の整備を後押しする社会の要請にどう対応していくのか、従業員一人上がりの労働生産性の向上、離職率の低下、従業員満足度の向上など、社会からの要請に応えながらも、これまでの業績を維持していかなければいけない。
【労働分配率を活用したクラスター経営】
ところで、労働分配率を活用したクラスター経営をご存じでしょうか?クラスター経営とは、労働分配率を活用して、「給与と利益を適正にする」という経営術です。
これまで、日本の企業は年功序列・終身雇用のもと人事評価を行ってきました。しかし、それは、経済が右肩上がりの成長していくことを想定して誕生した、雇用確保のための人事制度です。飛躍的な経済成長が望めなくなった今、こうした制度では会社を維持することはできません。
多くの社長(経営者ではない)は、人件費を固定費と見ているのではないでしょうか?売上に対して連動しない費用、実際にそう考えている社長はまだまだ多くいます。しかし本当にそうなのでしょうか。売上によって当然変化するべきものではないか。売上が上がれば給与が上がり、売上が下がれば給与も下がるものではないでしょうか。
【労働分配率=利益に占める人件費の割合】
【計算式】
クラスター経営は、当たり前の事を当たり前に徹底する手法であり、すべての業種にあてはめることができます。多くの赤字会社は、売上が減少して利益が出ていなくても給与を下げることをしない。業績に応じて給与を下げる、この当たり前のことすらできないでいる。普段から社員を経営に巻き込んでいないために、危機的状況においても社員を説得できないのです。
労働分配率経営における考え方の一例を挙げます。
①社員の人件費は年間いくらなのか
月30万円、年間賞与80万円の社員は、人件費は、440万円(30万円×12カ月+80万円)、これに二割の法定福利費などを上乗せした数字が実際の人件費となる。すなわち528万円。これが社員一人にかかる経費です。
②この給与をもらう社員は、いくら稼がないといけないか
人件費は経費です。ゆえに、経費をかけたら、それに見合うだけの稼ぎが必要です。
これをクラスター経営では、【必要稼働額】と呼んでいる。別の言い方をすれば、利益貢献度ということだ。【必要稼働額】を算出するために利用するのが、【労働分配率】です。例えば、労働分配率50%に設定したとしよう。その場合の【必要稼働額】は次のようになる。528万円÷50%=1,056万円。つまり、1,000万円以上を稼いで初めて528万円の給与がもらえるのです。
③月・日・時間で算出
大谷翔平選手の一打席当たりの値段などが、彼の年棒が公表されたときなどに話題になるが、これはプロ野球選手だけの問題ではなく、社員の給与でも、この考え方は当然、問題になります。
年間528万円をもらっている社員であれば、1日当たり(月22日出勤として)2万円です。時給で計算すると、2,500円。コンビニのバイトが時給1,000円ちょっとだとすれば、立派な金額です。これを【必要稼働額】で計算すると、一時間当たりで5,000円1日に4万円を稼がないといけないことになります。
ただ、管理部門などは、この限りではありません。あるいは、管理職手当などは別の見方で評価するという工夫が必要です。そうしたマイナーチェンジは加えるが、あくまでも【必要稼働額】と【労働分配率】が給与を決めるものさしになる。
稼ぐべき利益を明確にする
①月額給与 | ②年間賞与額 | ③年間給与額 (①×12)+② | ④法定福利費の比率 | ⑤あなたの人件費 |
300千円 | 800千円 | 4,400千円 | 1.2 | 5,280千円 |
Qあなたはいくら稼がないといけないのか?
●自分の人件費と労働分配率から必要稼働額(利益貢献度)を明確にする
必要稼働額(利益貢献度)=人件費÷労働分配率 |
1.年間必要稼働額 10,560千円(=5,280千円÷50%)
2.月間必要稼働額 880千円(=440千円÷50%)
3.1日当たり必要稼働額 40千円(=20千円÷50%)
4.1時間当たり必要稼働額5千円(=2.5千円÷50%)
もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ、「給与は自分で決めなさい」(著者 野呂敏彦
幻冬舎ルネッサンス出版)をご覧ください。
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