飲食店の資金改善手法

皆さんこんにちは。資金コンサルタントの細川です。いよいよ冷え込みも深まり冬の気配が濃くなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。寒暖差の大きさについつい体調を崩しがちになりやすい季節ですが、新型コロナウィルス対策に限らず、こまめな手洗い、うがいなどで、引き続き健康管理には気を付けていきましょう。

 

 

本日は最近話題のGo toキャンペーンの対象となっている、飲食店の資金改善手法、特に収益面についてご紹介したいと思います。ご存じのように飲食業は経営環境が厳しい業種の一つで、帝国データバンクの調査によると、新型コロナウィルス関連の倒産件数のうち最多の業種となっています。集客することが容易ではないこのような状況下で如何に生き残るか、ズバリ結論から申し上げると、「資金は管理で増やす」です。特に飲食業はパート・アルバイトなどの非正規労働者が従業員の多数を占めますので、社長だけでなく誰にでも分かりやすいよう数値を通して明快に管理していくことが重要となってきます。

 

収益構造と損益分岐点売上高

まず飲食店の収益構造を分解してみていきましょう。

利益は、

 

売上高×利益率-経費(固定費)

 

で計算されますが、これを分解していくと、

 

(売上高=客数×客単価)×(利益率=限界利益÷売上高)-固定費

 

となります。客数の中には

既存客 と 新規客 

 

が含まれ、客単価は、

 

平均商品単価 と 平均販売商品数

 

に分解できます。

また限界利益÷売上高をさらに分解すると、

 

売上高-変動費)÷売上高

 

となります。変動費と固定費についてはこちらの記事にありますが、変動費は売上高に比例して増減する費用、固定費は売上高に関係なく一定に発生する費用です。

 

まとめると、

 

利益={(既存客+新規客)×(平均商品単価×平均販売商品数)}

×{(売上高-変動費)÷売上高}-固定費

 

となり、それぞれの要素に対して対応していくことで収益改善を図ります。

そして利益を出すためには、売上高-変動費-固定費がプラスになればよいので、

 

売上高-変動費=限界利益≧固定費

 

つまり、限界利益で固定費をまかなえていれば、黒字になります。

ちなみに限界利益=固定費=利益0となる売上高損益分岐点売上高といいます。

 

売上高の対策

では次にそれぞれについての対策について紹介していきます。

まず売上高に含まれる客数と客単価ですが、資金改善の場合は外部環境に左右されやすい客数よりは、自社の努力でコントロールしやすい客単価を向上させることが優先されます。

 

客単価を向上させるには、店内での声がけやメニュー表、POP等の工夫などにより、

平均商品単価の向上(アップセル)のため、値上げや上級品、限定品などの販売

平均販売商品数の増加(クロスセル)のため、セットメニューの販売

を強化します。

 

また、客数も決して軽視はできないですので、

既存客には来店頻度を向上させ離脱防止を図るため、満足していただける新しい価値や特別感を提供し、共感、感動を呼び起こして信頼をより強固にしていく必要があります。

また不満を解消し要求に応え飽きさせないよう、マンネリ化や平凡さ、悪平等、画一的サービス等を排除し、常に期待水準に応えていく必要があります。

満足していただくための具体的手法としては、イベントや選べる・独自のメニュー開発、新商品の提供、丁寧な接客、SNSの活用による関係性強化などがあります。

そして迅速なクレーム対応、再発防止策の徹底、改善活動の継続、メニューのリニューアルなどを実施し、不満を解消し要求に応え飽きさせないようにしていきます。

 

新規客に対しては認知度を向上させ不安を解消し安心して利用していただくため、情報提供をしっかり行い、店舗の魅力や強みを伝え、割安感、特典などを訴求します。そして分かりやすいメニューや店づくりやビフォアサービスの実施で、納得感を高めていくことです。

具体的施策としては、店頭POPの工夫、呼び込み・ハンティング、ポスティングの実施、無料・割引クーポンによる勧誘、新商品のお試し提供や、適正でわかりやすい価格表示、SNSでの情報発信などを行います。

 

但し、一般的に新規客の獲得のためのコストは既存客維持のためのコストの5倍かかるといわれていますので、改善効果を比較的出しやすいのは既存客です。

 

費用の対策

売上高という資金の「入り」だけでなく費用(変動費と固定費)という資金の「出」も制することが大切になります。

飲食店で変動費の多くを占めるのは商品の原価人件費になります。それぞれの売上高に占める割合をFLといい、併せて概ね60%台で管理するのが、飲食店における資金改善の定石となります。また、固定費で多くを占めるのが店舗の家賃で、売上高に占める割合をRといい、概ね10%に抑えておくことが必要です。

 

Fは、高すぎると利益を圧迫し、低すぎるとお客様の満足度を下げて客離れを招きます。

具体的対策としては、原材料の見直しや仕入先の変更、レシピの作成と順守、適正在庫の維持による廃棄削減、加工の工夫による材料歩留まりの向上などがあります。特に現場では棚卸をこまめに行ったり、定期的な研修や管理者による抜き打ちチェックなどを行ったりすると、従業員の意識が高まり効果的です。

 

Lも、高すぎると利益が出ませんし、低すぎるとサービス品質を低下させてやはりお客様の不満を招きますので、人時売上高=従業員一人当たりの1時間当たりの売上高を設定します。

具体的対策としては、まず事前にはあらかじめ毎日の売上予算に基づいた必要人数を人時売上高で算出し、それに基づいてシフト表を作成しておくこと、一定水準以上のサービスが時間内に提供できるよう従業員の教育訓練を実施したり設備改善をしたりすることなどです。

また現場対応としては、管理者が当日の売れ行きを見ながら従業員の休憩時間などを調整したりハンティングをさせたりするなど、機動的に人員を配置することです。

 

■その他の固定費についても、水道光熱費や細々とした備品消耗品など現場で改善できる要素については、チェックシートなどを使い従業員に管理させることも効果的です。

 

 

いかがだったでしょうか。今回はやや深い話をしましたが、資金の要素を細かく分解し簡単で分かりやすく管理する手法は、全ての業種に当てはめられることです。皆さんの会社でも是非応用してみてPDCAの好循環を引き起こしてみてください。

 

 

 

 

細川

 

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